2022年入職 Aさん 経済学部卒
中間事業所(市民生活相談センター)
炊き出しボランティアからインターン、そして就職へ
Aさんの学生時代のことを教えてください
福祉とは全然関係のない経済学部にいました。他の学部の授業を受けた時に、福祉の型にハマらない福祉の取り組みを紹介する授業に出会いました。障害があっても、認知症があっても、その人がその人らしく生きるのを支えることって、生きづらい社会を変えていくことに繋がるんじゃないかと思って、福祉に興味を持つようになりました。
抱樸のことはなにで知ったのでしょうか
TVをみていたときに、たまたま抱樸のドキュメンタリーが流れてきました。北九州出身で勝山公園も何度も通ったことがあるのに、そこで長い間、ホームレス支援に取り組んでいる人達がいて、炊き出しの活動が行われていたことを知らなかった自分に衝撃を受けました。それで、思い切って炊き出しのボランティアに参加してみたんです。
すごい!行動的ですね。炊き出しの印象はどのようなものでしたか
炊き出しに参加したら色んな人達が話しかけてくれました。炊き出しは単にお弁当を配るだけではなく、列に並ぶ人もボランティアもごちゃまぜになってその日会えたことを楽しむような、エネルギーの高い場所だと感じました。自分が初めて地域の中にいるとも感じましたね。それで、もっと抱樸のことを知りたいと思って、大学の先生に繋いでもらって、インターンとして働かせてもらうことにしました。
インターンではどのようなことをされたのでしょうか
今働いている、中間事業所に配属になって、面談にサブで入らせてもらったり、記録をつくったりしていました。言葉の選び方によって、相手を元気づけられることもあれば尊厳を傷つけてしまうこともあり、なんて難しい仕事なんだろうと思いました。卒業後は大学院に行くことも考えていましたが、インターンで働いているうちに、このまま働き続けたい気持ちが強くなって、抱樸に就職しました。
その人の「その時」に立ち会えるのは面白い
中間事業所にはどのような方たちが相談にいらっしゃるのでしょうか
経済的に困窮している方の相談がメインではあるのですが、家族の問題や、身寄りがなくて困っているといった問題など、あらゆる相談を引き受けています。色んな問題に対して、こんな制度を使えますよと紹介したり、こういう手順で一緒にやっていきましょうというのを提案したりしています。
支援するうえで心がけていることはありますか
相談にくることは、とてもハードルが高いことだと思っています。だから、相談に来てよかった、話してよかったと思ってもらえるように心がけています。具体的には相手がこれまで頑張ってきたことを肯定し、受け止めることを大切にしています。自分が相談したいと思える相談員でありたいと思っています。
どんなときにやりがいを感じますか
家族関係に悩んで相談にいらっしゃった方が、苦しい状況から抜け出す決断をしたときや、末期癌で「いつ死んでもいい」と言っていた方が、治療してもう少し生きようと決断したときなど、その人の「その時」に立ち会えるのは面白いですね。
炊き出しは元気をもらえる居場所
Aさんといえば炊き出しの現場に通い続けてる姿が印象的ですが、Aさんにとって炊き出しとはどのようなものでしょう
ホームレスが排除されるこの社会で、金曜日に集まって炊き出しをやるのは、排除されていい人なんていない、私たちは気にかけているというメッセージであり、社会に対する抵抗でもあると思っています。36年間この活動を続けてきた人達を支えるという意味でも、炊き出しにはできるだけ通い続けたいですね。
実際にホームレスの方と出会ってなにか変化はありましたか
小さい頃は公園や高架下でブルーシートをよく見かけました。いつのまにか見かけなくなったと思っていたのですが、炊き出しや夜回りに参加してみると、いなくなったのではなく追いやられていたんだというのがよく分かりました。そして、ホームレスの方とお話してみると、気さくな人や気難しい人、いろんな人がいました。ホームレスは状態であってその人そのものではない。なぜ実際に出会うまでそんなことがわからなかったんだろうと、この社会の問題の根深さを感じました。
目の前のその人に必要な支援を一緒に考えられるのが抱樸
抱樸で働く面白さってなんだと思いますか
つながり続ける支援とかひとりにしない支援とかが抱樸の特徴だと思っています。そんなの難しくない?と言われることもありますが、それが組織全体の行動指針なので、個人ではなくチームでやれることが強みだと思います。
何か印象的なエピソードはありますか
末期癌で身寄りがないおじいちゃんのお見舞いにうな丼を持って行って、一緒に食べたことがありました。TVのCMをみて「食べたい」と言っていたので。職場で「こんなことをしようと思うんです」と提案した時に「いいね」と応援してくれる環境なのはありがたいです。制度の枠のなかで支援するのではなく、目の前のその人と人間的にどう関わるかというのを一緒に考えてもらえるのは抱樸ならではだと思います。
Aさんが今後、実現していきたいことについて教えてください
抱樸で働いて3年目ですが、NPOというのは創造性の高い組織であるということを実感するようになりました。目の前の人の必要に応じて事業を拡大してきた抱樸の歴史を振り返ってみてもそうですが、NPOは制度ができるのを待っていられない人たち、身体が先に動いてしまう人たちの集まりだと思っています。だから、例えば、この先、自分が「こういう事業が必要だと思う」と声をあげたとしたら、たぶん色んな人が力を貸してくれると思うんです。なので、相談のなかできちんとアンテナを張って、今の制度で何が足りなくて、その穴を埋めないと苦しい人達がいるということにちゃんと気づいて、声をあげられるようになりたいです。
最後にこの記事を読んでる皆さんに一言お願いします
「困窮するのは自己責任」という社会の中で、抱樸を応援してくれたり関心を持ってくれる人がいることが大きな支えです。「もっとこういう社会にしたい」という考えがある人は是非抱樸に来て欲しいと思います。一緒に頑張りたいです!